しのだちぃ

わたしの日常をイラストとデザイン画を添えて更新しております、、

気分一新、新たな日です、、  1980年代 / Part-3

ねこちぃ




赴任先の制作現場

1980年代/ Part-3

「※文字抜け、打ち損じにご理解を、」


生活ができないほどの何もない、

ボロいこの部屋を何とかして生活できるように、

しなければ、と少し褪せります。

わたしは入り口に立ち、キッチンから窓に目を向け、

逐一、あれも、これもと思いつくモノを、

メモにしている、これくらいでいいだろう、、


そのメモを、アシスタントの彼、中田新之助に

(以下、通称の新くんと表記)これでどう。

必要なものがあれば書き足して!、、

4日目の朝は初出社が決まっているのだから、

朝から買いにいこうよ、あとは新くんに任せた。



トースター、レンジ、洗濯機まで買うのですか、、

当たり前でしょう!テーブルも椅子もないこの状態では

わたしは、あなたに何もお知られないわ、

わたしが負担してあげるから、これらを揃えてある

中古を扱う何でも屋さんを捜してきて!、、


彼は自転車に飛び乗って、畑の道をまっすぐ、

バス停のある道に向けて走らせる、、

わたしは、夕食の材料としてひき肉などのメモも、

彼に渡しておいた、、

(当時は、パソコンがない時代で、何を買うにしても、

 唯一の頼りになるのが電話帳に載る広告でした。)


汗びしょりの新くんが40分ほどして戻ってきて、

わたしに頼んでいた夕食の材料をキッチンのまな板に置き、

おれ、五右衛門風呂で水を被ってきます、と云う、、

「ちょっと待って、お風呂は1階の大家さんが使う日だから、

訊いてからじゃないと、入れないはずよ!、、



新くんは、スーツケースからタオル、下着などをとりだし、

わかりました、と階段を下りて行った、、

わたしは、お風呂場前にいる大家さんと話している新くんの

様子を見ている、お風呂場と着替え兼用の狭い物置きが

4つ並ぶ、その先の不揃いな竹林をわたしは眺め、、

また、この先も試練が続くかも、と思ったりもする。


それにしても、暑い、わたしの着てるタンクトップは、

汗で濡れてしまい胸が透けているのがわかる、、

わたしは新くんのスケッチブックをうちわ代わりにして、

パタパタと振り身体を冷す、そのスケッチを開いて見た。





必須科目としての女性のヌードデッサンが描かれていて、

日付と先生からのAのサインがある、、

Aは最高評価で、Aダッシュ、B、Bダッシュ、C、Cダッシュと、

当時のデザイン科のどこもが、この6段階に判定としていた。

その先のページに、彼が描いたクロッキーが5枚ほどある、、

これは酷いです、時間内に描いて慌てたのがわかります。


これは漫画かイラストなのか正直いって酷い、そんなタッチです、

その彼のスケッチをみて、これではアシスタントは務まらない、

わたしは少し気落ちしてしまった。


新くんが10分だけ、許可をもらえたと水を被り、

Tシャツと短パンの格好で部屋にもどってきた、、

大家さんから、もらったという達磨の絵の大きなうちわを

わたしにくれた、何か、明治か大正時代を思わせる、、

そのうちわで、わたしはタンクトップの下を捲って、

パタパタと忙し気に風をおくる。


あんたは、水を被れて、わたしは汗臭いままで、、

腹が立ってきたと言い、わたしが作ったハンバーグに

茹でた人参にブロッコリーをそえ、お味噌汁に、

茶碗に山盛りのご飯を、これアンタのぶん、運んで!と

彼のスーツケースの上に置かせた、、



新くんは、わたしの顔を見て、涙を浮かべ、、

「先輩、ありがとうございます、おれ、頑張ります、、」

そうしてもらわないと、わたしの立場が危うくなるよね、、

ところで、あなたが描いたクロッキーは酷すぎる、

目に余るわ!、芸短大では、これが通用するの?、、

女子のハダカを見慣れていない、

表情、手の動き、全体のフォルムを捉えられない、ぜんぜんダメ、、

この先、正直言って、わたしは不安ですね、、






「、、あ、はい、芸短大の予算上、それが出来ませんでしたので、、

空想で描きました。」と彼は口にご飯を入れたまま箸を置く、、

じゃ、あなたは女性のハダカは、見慣れてないと云うのね、、

なのに、わたしには胸が見えてます、とそう云うわよね、、

あなたたち、風俗店、いえ、それは、もうないにしても、、

雑誌を賑わせている、女性の裸エプロンなんか見てるでしょう!


「おれ、それ知りません、」ええ、うそ!でしょう、

この街には、そういう本は売ってないんだ、こういう写真が

役に立つのに、遅れているわね、せっかくの料理が覚めてしまう。

続きはご飯をすませてからにしましょう、、

(わたしは面倒くさいから、同じ部屋にいるときの新之助くんを始終、

 アンタと呼び捨てにしていた。)


わたしは食べた食事の消化作用で、さらに汗が滴る、、

食器を洗い終え、その場で素っ裸になり、キッチンの水をタオルに

浸して、汗臭い身体を何度も拭いた、、

そのあとバスタオルを巻いて、窓に腰かけ、タバコ残ってたら、

1本ちょうだい、とわたしは指の2本を口にする仕草で言う。



新くんが、キャメルの1本とロングピースを見せる、

デザインがダサい、そのロンピーは要らない、その煙草を吸う、

わたしを思うと、大したデザイナーではない、その気がする、、

わたしは残り1本のキャメルの煙草を口に咥え、火をちょうだいと、

横着に言い、今度ライターを買ってあげるわね、、


わたしは、新くんにタバコの火をもらう、、

身体を近づけると、からだに巻いたバスタオルが緩んで、

わたしの胸が露わに、わたしは動じない、タオルを腰に巻き直し、

胸は丸出しの状態、、アンタ何度も見たでしょう、、

わたし、畏まって着替えるなどしないわよ、じゃないと、

この部屋にいるわたしは、情けなく思えるのよ。


とにかく嘘でもいいからさぁ、それなりのデザイナーです!

そういう雰囲気の恰好をして欲しいの、頼むわね、、

わたしは外に向けタバコの煙を吐くのです。

そしてこの窓に風鈴をつけたら涼しく思えるかもね、と彼に言う、、


わたしは夕暮れの外を眺め、あんたの実家はどんな家なの、

へぇ、温泉が近いの!良いわね、家は広くて眺めがいいんだぁ、、

いつか、わたしをそこに連れて行きなさいよ、、

「はい、そう考えています、」


そのあなたが、この何もないアパートで暮らさなければならない、

それは会社が決めた、あなたに対する現状の評価よね、、

新くんが早くチーフになって抜け出せるようにわたしは手伝うわよ、

そうでないと、わたしも困るしね、、






翌朝、そうそうに出掛けたわたしたちは、、

中古電化家具の何でも屋さんで、テーブルや椅子など必要なモノを

決め、夕方まで届けてください、と言い、駅前のデパートに急ぎ、

メモにした全部を次々と買い漁ったのです。

そして昼食を摂り、二人して急いでアパートにもどった、、


1時間ほど経って、すべての品が入り口いっぱいに置かれ、

梱包された木組みなど、始末に困るものは持ち帰ってもらった。

冷蔵庫も洗濯機も、なにもかも揃った部屋が狭く思える。


最後にドアの前に置いてある、60×90㎝ほどの丈夫な作業台を

6帖の板張りに置き、畳みの間にはベージュ色のカーペットを

敷きつめ、作業台の2つの椅子にクッションを置き、

スポットライトもとり付けた、、彼は作業台を揺さぶり、

「最高です!、、」とわたしに笑顔みせる、

その上の蛍光灯も変えた、作業台にポスターカラー、数枚の絵皿、

定規など並べては、位置を変える、うれしそうな彼、、


その彼を見るわたしも、うれしく思えて涙が浮かぶ、、

あとは時間があるときに、整えればいいこと、残された2日間を

朝から夜遅くまで、広告のすべての決まり、理論、発想とアイデア、

その表現の実技に費やす、それを彼に覚悟しなさい!とわたしは伝え、

それがすめば、わたしの胸像写真を額にしてあなたにあげる。



      

新くんが、アイスコーヒーを作ってくれた、、

キャメルをわたしに差しだし、わたしが選んだおニューの

ライターで火をつける、、扇風機の風がわたしの髪を揺らす、

ずいぶん使ったおカネのことは、わたしが栄養失調で無料で

助けていただいた当時の先生を思えば、、

これもお返しだと思え、わたしはそう気にならない、、


今日のこの日は、今までとは違います、、

わたしは質屋さんの向かいの銭湯に連れて行ってと彼に頼んだ。

わたしは自転車の荷台に乗って、彼の肩に手を掛けている、、

何だか、遠い昔にお爺ちゃんに乗せてもらった、あの日ことを、

わたしは思いだすのです、、


銭湯からもどった彼はウォークマンで曲を聴いている、、

何、聴いているの、、

「これはですね、The Police の「Every Breath You Take」で、

1983年にイギリスとアメリカで大ヒットした古い曲です。

今でも人気があって、気落ちした時、この曲にいつも助けられます。

先輩、ちょっと聴いてみてください、」新くんがイヤホンを、

わたしに、、ええ、そういえば、確かにそんな感じがするわね、、


1980年代前半、▲

初のカセットケースサイズとされ、

当時を象徴するSONYウのォークマンです。


「先輩はどんな曲が好きですか?、、」

そうね、夜のバイトの時、いつもマリアさんがステージで歌っていた、

R&BのJAZZ系、重低音の語りかけるように歌うそんな曲かな、、

曲名は忘れたわね、、当時は、音楽を聴く時間がなかったわ、、

でも、マリアさんが歌っていたその曲を聴けばマリアさんをまた

思いだせるから、今度、ヒマを見つけて探して見るわ、、






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